当院の白内障手術においては通常の単焦点眼内レンズのほか、様々な種類の多焦点眼内レンズをご用意しています。多焦点眼内レンズはその用途やライフスタイルに合わせて、二焦点・三焦点・五焦点、焦点深度拡張型やその混合型など様々なタイプがあります。
多焦点眼内レンズとは?
単焦点眼内レンズ
ピントを遠くに合わせた場合、手元にピントが合いません。
二焦点眼内レンズ
遠方と近方ともにピントが合います。遠くのテレビと手元のリモコンが同時に眼鏡なしで見ることが出来ます。
二焦点眼内レンズの方が圧倒的に良いように思われますが、欠点もあります。上の図のテレビの中の芝の色に注目してください。二焦点眼内レンズの方は単焦点眼内レンズと比べてわずかに緑の色が淡いことがわかると思います。これをコントラスト感度の低下といいます。ただし通常の白内障の方の場合、元々それ以上にコントラスト感度が落ちているため問題となることはほとんどありません。
また二焦点眼内レンズの構造上、上右の写真のように車のヘッドライトなどの明るい光を夜間まぶしく感じたり(グレアといいます)、光の周囲に輪がかかって見える症状(ハローといいます)がある程度生じます。
二焦点眼内レンズは遠方と近方においてはよく見えるものの、中間距離(約60~70cm)がやや弱いという弱点があり、そこで登場したのが三焦点眼内レンズです。三焦点眼内レンズは遠方・中間・近方の三か所にピントが合うように設計されており、眼鏡をほぼ必要としません。現在日本国内の多焦点眼内レンズの中で最も多く使用されています。
多焦点眼内レンズにはもう一つ、焦点深度拡張型眼内レンズというタイプがあり、このレンズは遠方から中間距離までを連続的にピントを合わせることができます。二・三焦点眼内レンズと比べ、コントラスト感度の低下やグレアやハローが少ないのが特徴です。ただし近方はやや弱いですので、読書などの際は老眼鏡が必要となります。イメージ的には単焦点眼内レンズのグレードアップ版と考えるとわかりやすいと思います。
このように多焦点眼内レンズはそのレンズにより長所や短所が異なるため、手術を受ける方のライフスタイルやニーズ、予算に合わせて、最も適したタイプの眼内レンズをご提案いたします。
多焦点眼内レンズをお勧めする方
- 眼鏡を使用しない生活を楽しみたい方
- 老眼鏡をかけるのがわずらわしい方
多焦点眼内レンズが向かない方
- 中等度以上の緑内障や網膜の病気をお持ちの方
- 見え方の質にこだわりを持つご職業の方(カメラマン、デザイナーなど)
- 細かいことが気になりいろいろと考えこんでしまう神経質な方
当院で取り扱っている多焦点眼内レンズ
Lens Type
Alcon/三焦点
Clareon PanOptix(パンオプティクス)
遠方・中間・近方の3か所にピントを合わせることができる三焦点レンズで、このタイプのレンズは日本国内で最も多く使用されています。新素材が採用され、長期的な透明性がより向上しました。
AMOジャパン/xxxx
Tecnis Odyssey(テクニスオデッセイ)
xxxxxxxx
SIFI MedTech/焦点深度拡張型
MINIWELL Ready(ミニウェル・レディ)
SIFI MedTech社(イタリア)製の焦点深度拡張型多焦点眼内レンズ。多焦点眼内レンズの弱点であるグレア、ハローやコントラスト感度の低下がほぼないという画期的なレンズです。遠くから中間距離までを非常にクリアに見ることがてきます。このレンズはオーダーメイドの特注となり、ヨーロッパからの輸入となりますので眼内レンズを決定してから約2~3週間の時間をいただいております。
Hanita Lenses/五焦点レンズ
Intensity(インテンシティ)
イスラエルのHanita Lenses社が製造した眼内レンズ。(遠方、遠中、中間、中近、近方)にピントが合う、世界初で唯一の五焦点レンズです。
最近のテクノロジーにより、グレアやハローなどの夜間のまぶしさが少なく、様々なシーンで裸眼で過ごすことが期待できます。
このレンズはオーダーメイドの特注となり、イスラエルからの輸入となりますので、眼内レンズを決定してから約1カ月ほどの時間を頂いております。
料金体系について
多焦点眼内レンズを使用した白内障手術には「選定療養」と「自由診療」の2通りの料金体系があります。
選定療養の方が自由診療よりも安価な金額で手術を受けることができます。しかしながらごくまれに術後に眼内レンズの交換手術(日本国内では全多焦点眼内レンズ患者様の約2%と報告されています)などが必要となった場合は保険診療を用いることができず、自費による高額な費用がかかります。自由診療の場合は術後3か月の間、検査費用や薬の費用のほか、眼内レンズの再手術が必要となった場合でも追加料金はいただきません。選定療養対象のレンズを用いる患者様には選定療養か自由診療かを選択していただきます。
選定療養について
選定療養とは、患者様ご自身が選択して受ける「追加的な医療サービス」で、その分の費用は全額自己負担となります。
令和2年4月より、術後の眼鏡装着率の軽減を目的とした多焦点眼内レンズを使用する白内障手術は、厚生労働省が定める選定療養の対象となりました。
他の病院で、同じ選定療養の扱い
- 入院時の個室代・差額ベッド代(大部屋は無料ですが、個室は有料など)
- 歯科治療の際の金属材料(金歯やセラミックをするなら追加料金発生など)
上記と同じく、多焦点眼内レンズの代金(保険適用外)を自費でお支払いいただくことで、手術技術料および検査料は保険適用で受けることができるといったサービスになります。
手術費用
選定療養の場合
Clareon PanOptix(パンオプティクス) | 片眼 341,000円(乱視矯正つきトーリックレンズ、374,000円) |
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Tecnis Odyssey(テクニスオデッセイ) | 片眼 418,000円(乱視矯正つきトーリックレンズ、473,000円) |
手術費用の計算方法
両眼にパンオプティクスを入れる場合
保険割合は3割とします。
保険割合3割 = (両眼)100,000円, レンズ代金 = 341,000円 × 2
保険適応分 100,000円
追加費用(レンズ代金) 682,000円
合計費用 782,000円
自由診療の場合
MINIWELL Ready(ミニウェル・レディ) | 片眼 462,000円 |
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Intensity(インテンシティ) | 片眼 550,000円 |
手術後3か月の診療費・薬代を含みます。 トーリックレンズを使用した場合も同額です。 |
多焦点眼内レンズのご質問
Questions
多焦点眼内レンズは、メガネがいらなくなるのですか?
多焦点眼内レンズの種類によります。焦点深度拡張型では老眼鏡が必要なことが多いです。最も眼鏡が必要なくなる可能性が高いのは三焦点及び五焦点眼内レンズですが、絶対ということはなく時に眼鏡が必要となる場合もあります。
どんな人でも多焦点眼内レンズの良い適応となりますか?
白内障以外の病気がある場合など、多焦点レンズをお勧めしない場合があります。病気の種類や程度によって異なりますので医師にご相談ください。